矢野産info, 培養室から

受精卵の着床前診断(PGT)について

受精卵の着床前診断(PGT: Preimplantation Genetic Testing)について

はじめに

当院は不育症(習慣性流産)のご夫婦に対する検査として、2010年(H.21)に着床前診断(PGD: Preimplantation Genetic Diagnosis)を開始しました。その後、次世代シーケンサー(NGS: Next Generation Sequencer)によるゲノム(DNA)解析が可能となり、より正確な受精卵の分析ができるようになりました。それに伴い、着床前診断の名称はPGDからPGTに変わり、当院も新たに「着床前診断(PGT)実施施設」の認可を受けました(2021年)。

 

受精卵に対する着床前診断(PGT)の方法

体外受精(IVF)または顕微授精(ICSI)により受精卵を得て、その受精卵(胚盤胞)の外側(栄養外胚葉)の細胞を数個採取します(胚生検)。採取された細胞は凍結保存され、ゲノム(DNA)解析をするため、日本産科婦人科学会に認定された外部の検査機関へ提出します。

 

着床前診断(PGT)の種類

1.着床前胚染色体異数性検査: PGT-A (Aneuploidy)

反復ART不成功、反復着床不全、反復流産の患者様が対象です。
正数胚(染色体の数的異常なし)と判定された胚のみを移植することで、妊娠率の向上と流産率を低下させることができます。

 

2.着床前胚染色体構造異常検査: PGT-SR(Structural Re-arrangement)

当院が積極的に行なってきた検査です。どちらかが染色体異常を有するカップルでは健康に生活できる健常者であっても、妊娠すると流産を繰り返す(不育)場合があります。その染色体異常として「均衡型転座」と「ロバートソン転座」が知られています。
不育症の原因としては少ないですが、4.5%程度に認められます。妊娠しても流産を繰り返せば、精神的負担が大きくなります。すこしでも流産率を低下させることで精神的なサポートを行ないます。

 

3.着床前遺伝学的検査: PGT-M(Monogenic)

重篤な遺伝性疾患(デシャンヌ型筋ジストロフィー症などの遺伝病)の発症者や保因者が検査の対象となります。受精卵のゲノム(DNA)解析をすることで、その疾患に関連する異常を調べます。「命の選択」に関わる生命倫理上の問題であり、当院が単独では行えません。愛媛大学附属病院と連携しながら慎重に行ないます。

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